直木賞の受賞が決まってすぐ記者会見で「時勢を見て、今年中に47都道府県の書店にお礼に回りたい」と、私は宣言しました。
すぐに大風呂敷を広げる私のことです。話半分にお聞きになっていた方も多いでしょう。しかしこの度、約束通り、五月の末頃より始めようと考えております。その間、一度も自宅に帰らず、一気に回る予定です。100日程度は掛かるでしょう。その間もワゴン車に机の設置工事を行い、移動中はずっと執筆を行います。
「本当にやるのか」だとか、「馬鹿だろう」などという声が聞こえてきそうです。その通り、馬鹿なのでしょう(笑)何故、このようなことを行うのか。
まず一つ目は、本当に書店さんに恩返しをしたいから。私はこの業界に救われたと思っています。作家が来るのは東京、大阪などの大都市だけ、仮に他の県に来たとしても主要な町だけ……そんな声はよく耳にします。
出版不況が叫ばれる中、郊外でも、小さな店構えでも、本が大好きで頑張っておられる書店さんは多くいます。そんな書店さんにも足を運び、少しでも盛り上がりの切っ掛けになればと考えております。
最近、小中高生、若い読者が、私が経営を引き継いだ「きのしたブックセンター」や、講演に足を運んでくれます。中にはテレビやラジオの生放送終わりに、出待ちをしてサインを待ってくれる人も。
照れ臭くて、気恥ずかしくて、「そんな大層なもんやないから」などと茶化している一方、彼らの目の輝きを見て、今自分はこんな目が出来るか――。と、考えさせられることが間々あります。
野球少年がプロ野球選手に、メジャーリーガーに憧れるように、少年の私にとって作家はヒーローでした。そんな風に今、自分はなれているのかと自問自答する機会が増えたのです。
もともと私が子どもたちを教える仕事に就いていたこともあるでしょう。思い付いたとしても「絶対に無理」と、言ってしまいがちなことを、やり通す大人になりたいと思ったということもあります。
そしてこの旅で、若い世代は勿論のこと、これまで私の本を読んで応援し、賞レースなどでは私以上に一喜一憂してくれた全国読者の皆様に、直にお礼を申し上げる機会を作りたいと考えたということもあります。
一つ、二つと、綺麗なことを言ってきましたが、要するに
「私がやりたい」のです。
誰もやっていないから、面白そうだから、そんな気持ちも正直なところあるのです。今回の受賞が20年後ならば、いや10年後だとしても、体力的に厳しかったのではないかと思います。ただ、今ならばまだ出来るというのも大きい。
そして私は受賞時に「文学賞はお祭りだと思う」とも答えています。毎度、人力車を用意し、落選の姿を晒す覚悟でテレビクルーに入ってもらったのも、ただただ私の心底大好きなこの業界を盛り上げたかったからです。作家はものだけ書いておけばよいとお考えの方もおられるでしょう。
しかし、私は一人くらいこのような、騒々しい作家がいてもよいのではないかと考えています。私にとっての祭りはまだ終わっておらず、むしろここから。そんな想いを込めて、今回のプロジェクト名も『今村翔吾のまつり旅』と、させて頂きました。
私の生涯で共に過ごした時のある人との再会を、未だ見ぬ地、未だ見ぬ人に、出逢えることを心より楽しみにし、全国四十七都道府県を走り抜けて参ります。
令和四年三月吉日
直木賞作家・今村翔吾が、楽しく全国津々浦々?感謝の思いも込めて巡ります。そんな“まつり旅”取材のお申し込みなどはこちらからお願いいたします。
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